あなたは、「オシャレな部屋」と聞いて、どんな部屋を思い浮かべるだろうか。
筆者は、何も浮かばない。
最近ピンときたのだが、オシャレに必要なのは“センス”ではなく、“情報”なのではないだろうか。筆者の部屋が一向にオシャレにならないのは、センス云々じゃなく、「こうすればオシャレになる」という正解が見えていなかっただけだと思うのである。
つまり、「オシャレな部屋」を実際に見ることこそ、オシャレ部屋を完成させるために必要不可欠な第一歩なのではなかろうか…!? すごくない!? この仮説すごくない!?
ということで今回は、そんな仮説を立証すべく、オシャレを極めていそうなひとり暮らしの男子を探し、実際にお部屋を見せてもらうことにした。
「イマドキ男子のお部屋を拝見させてください!」と募集をかけ、応募者の中からオシャレそうなステータスの男子を探したところ、都内で暮らす齢21歳の現役パティシエが紛れ込んでいた。ステータスだけで嫉妬するレベルである。彼でオシャレじゃなかったら、オシャレな人など初めからこの世に存在しなかったと考えてもいいだろう。
今回もVol.1に引き続き、恋愛経験豊富な女性ライター・岬さん全面協力のもと、男性・女性両方の目線で男子部屋の調査を行う。はたしてパティシエの冠に見合うオシャレ部屋かどうか、ぜひその目でご確認いただきたい。
目次
突入するのはこの2人!
サノ(筆者)
93年生まれのライター。服も部屋も「個性」を出そうとして自爆するタイプ。
橋本岬
株式会社シューマツワーカーの広報担当を務めるかたわら、レースクイーンという横顔も持つ女性ライター。オシャレな部屋を見ると売れないミュージシャンと過ごしたあの頃を思い出す。
■いざ、現役パティシエの部屋へ

午後3時、都内某所。
写真は、家主のステータスを聞いてご機嫌な岬さんと、その岬さんを見てパティシエ(21)の部屋にケチをつけてやりたい気持ちが爆発してしまった筆者である。今回のお部屋は6畳の1K物件とのことだが、いったいどのような空間が待っているのだろうか。はやる気持ちを抑え、建物に入る。

すべてのパティシエは例外なくデザイナーズマンションに住んでいるものかと思っていたが、アパートの外観は予想に反し庶民的だ。今のところオシャレさは感じられないし、くすんだ緑の扉の向こうにパティシエが住んでいるとはにわかには信じがたいが、入らないことには始まらない。半分疑うような気持ちで、インターホンを押す。
「はーい」


「パティシエをしています、ユウです。よろしくお願いします!」
21歳の現役パティシエは、「かわいい弟分」を絵に描いたような青年であった。専門学校を卒業後ケーキ屋さんに就職し、今はチョコレート屋さんで働いているとのこと。最近はカメラマンやライターなどWebメディアの仕事にも興味が出てきたそうで、同行した編集者が「弊社で拾っちゃうか……?」と囁いてきた。
そして、肝心のお部屋だが……



パティシエ、期待を超える。
一歩踏み込んだ瞬間、思わず「なにこれ、店?」と呟いてしまった。
隅々まで整理された部屋は、色とりどりの観葉植物とブラウン系のインテリアで統一されており、そんじょそこらのカフェには負けないようなオシャレな空間が広がっている。
しかも、「中目黒で13万円」と言われても疑わないであろうこの部屋、家賃は5万円らしい。一等地のデザイナーズマンションに住まなくても、オシャレな暮らしはできるのだ。部屋はコーディネート次第でいくらでもオシャレにできるという事実を目の当たりにし、テンションが爆上がりする。
また、引き続き部屋を観察していると、筆者はあることに気がついた。
この部屋、パッと見のオシャレさだけでなく、とても細かなところまで気が配られているのだ。

観葉植物の切り口には、傷口をふさぐ塗料が几帳面に塗られ、

生活感の出やすい洗濯物カゴは、極力目につきにくい場所へ配置。

極めつけはこの男、ゴキブリ対策まで「シナモン」だ。
(リアル殺虫剤はテレビの裏の目立たないところに収納されていた)
ゴキブリすらオシャレアイテムでぶちのめすと聞き思わずユウ君を二度見してしまったが、彼の部屋はただ単にオシャレというだけでなく、一つひとつのアイテムから高い「生活力」を感じることが多かった。
植物の切り口を塗料でふさぐことも、シナモンがゴキブリ除けに効くことも筆者は知らなかったわけで、そうしたユウ君の豊富な「生活知識」こそがこの部屋のオシャレさを支えているのだろう。改めてオシャレには「情報」、つまりは「勉強」が必要なのだと感じ、背筋の伸びる思いがする。
またユウ君の部屋にあるアイテムからは、そこに住むユウ君本人の魅力がなんとなくわかってしまうのが印象的だった。

床にスタンバイするクッション&クマさんからはユウ君の「お茶目さ」が

本棚にずらりと並ぶ専門書からはユウ君の「ひたむきさ」が

ベッドサイドで光る間接照明からはユウ君の「いいオトコ」感がヒシヒシと伝わってくる(わざわざカーテンを閉めて撮らせてもらった)。
ここまでオシャレを極められると、あざとさまで含めて魅力的に見えるので、ユウ君はほんとうにズルい男だ。
どこを掘ってもオシャレで、本人の個性が魅力的に伝わってくる部屋。これ以上「正解」に近いオシャレ部屋など存在するだろうか? 筆者は興奮しつつ、岬さんに意見を求める。

「僕は正直ここまでオシャレな部屋に出会ったことがないんですけど、岬さんはどう思いました?」

「いや、完璧すぎる。絶対付き合ってくれないですよね、こういう男の子。本気になっちゃう前に自分からフェードアウトするわ。」
「何の話をしてるんですか?」
オシャレさは間違いなく最高クラス。だけど……?

「いや、部屋自体はもう最高ですよ!? 緑多めで、家具とかもナチュラル系で揃えてて素敵だし、本棚の雑誌だって料理系、カメラ系、Webマーケ系……本人の情熱が伝わるものばっかでユウ君の夢応援したくなるし。オシャレすぎて、ふつうに自分の部屋でマネしまくりたい(笑)!」

「でもね・・・・・・」
「ちょっと完璧すぎて気を遣っちゃうかもなあ……。
『ここに荷物置いたら部屋の雰囲気壊しちゃうからやめとこ』とか、『絶対お菓子こぼさないようにしなきゃ!』って気が張っちゃう気がする。」
私、この部屋にキティちゃんのパジャマとかポーチとか、女子のアイテム置く勇気ないもん。

たしかにキティちゃんは厳しいかもしれない

「オシャレなのはもちろん素敵なんだけど、オシャレすぎるとそれはそれで『ここに置くのは止めて!』とか『それはここにしまって!』とか細かく言われちゃうかもって、ちょっとかしこまっちゃう(笑)。」
男性目線で見ればすぐにでもマネしたくなるようなオシャレ部屋だが、あまり完璧すぎても疲れてしまうという岬さんの気持ちもわかる気がする。
筆者もこの部屋に入ってからというものずっとドキドキが止まらないので、もう少し抜けてるところがあってもいいのかもしれない。
オシャレの難所「水回り」をチェック
続いて、水回りを見せてもらうことに。
水回りは、生活感が出やすかったり、清潔さを保つのに一苦労したりと、何かとオシャレさを発揮しにくい空間である。
ここまではそのオシャレさで見るものを圧倒してきたユウ君だが、はたして水回りはどうだろうか。我々はワクワクしながらユウ君プロデュースの洗面所を覗き込んだ。

「わあ……」

性懲りもなくオシャレである。
さすがユウ君、やはり抜かりはなかった。
本来オシャレな空間になりにくい水回りも、見事「清潔さ×オシャレさ」を両立させ、メインルームと同様に居心地のよさを感じた。

「トイレ×すのこ」という組み合わせも、初めこそユウ君を二度見しはしたが、実際に座ってみると不思議と落ち着くのだ。お風呂上がりでも、水滴は床へ流れていくので、床そのままよりも湿気が気にならない。
(このとき、もはやオシャレが何なのかわからなくなってきつつあったのは内緒だ。)
また、水回り付近でユウ君のすごさを感じたのが、冷蔵庫だ。もう扉から違う。

まず、オシャレすぎる英字の紙。うちの「水道トラブル110番」もある日突然こうなっていてほしい。

マグネット式の容器には香辛料がオシャレに収納され、

メモリ式のクラッシックなタイマーも取り付けられていた。(一見オシャレに見えるが、筆者が持てばただの時限爆弾だ)
オシャレなのは外側だけではない。

冷蔵庫内に“キャラメルマキアート”のストックがある点には多大なる敗北感を感じたし(筆者のストックは青汁である)、

さすがはパティシエ、冷凍食品など一つも存在しなかった(筆者の家の冷凍庫は、冷凍汁なし担々麺でいっぱいである)。
なんだか、そもそもの生活スタイルの違いがオシャレの差に繋がっているような気がするが、ユウ君が普段どのようにオシャレな部屋を作っているのか、ポイントを聞いてみた。
オシャレの秘訣は、「好きなメーカーを見つけること」


「今日は素敵なお部屋を見せていただいてありがとうございました!
いったいどうしたらこんなオシャレな部屋を作れるのでしょうか?」

「僕もとくべつ何かを勉強したわけじゃないんですけど、アイテムを買うメーカーを統一することは意識しています。
僕はとくにインテリア雑貨メーカーの“ダルトン”が大好きで。レトロ・アンティーク調とか、アメリカンビンテージ系の雑貨を揃えられるんですけど……」

「あそこに立てかけた洋書も」

「木の板を固定しているオレンジの金具も、なんならその木の板も、」

「このフルーツのポスターも全部、ダルトンで集めました。時計も、観葉植物の鉢もみんな、ダルトンです」
「ダルトンだ! ダルトンに行けばいいんだ!」
「同じメーカーで揃えれば自然と部屋のテイストも統一されるので、あんまり難しく考えず「あっ、これ好きだな」と思ったものを買えるんですよね。」

「たしかにメーカーを絞っちゃえば、だいたい何を組み合わせてもオシャレになるかも!
でも、雑貨メーカーで全部揃えるのって、経済的に苦しかったりしないですか?」

「じつは僕、ダルトン以外は貰い物と100均アイテムばっかりなんですよ。
まな板とか雑巾みたいな日用品は基本100均で揃えてますし、」

「トイレにある板とかも、東急ハンズで300円で見つけて買ってます」

「300円の板置くだけでこんなオシャレになるんだったら置くよね……。すごい、買い物上手だ!」

「他にも、掃除機とか炊飯器みたいな家電製品は基本全部家族とか友達からの貰い物ですし、」

「このドライフラワーも、お店の枯れかけの花をもらってきました」

「細かなところは貰い物か100均アイテムで節約しつつ、好きなメーカーで気に入ったモノがあったときに思い切って買ってるんですね。この部屋のオシャレの裏には、そんな努力が……」

「一人暮らしを始めた以上、もう親に仕送りをしてもらうわけにもいきませんし、しっかり考えて節約しないと自立できないので。そのへんはかなり意識してお買い物をしています!」

「なんていい子……付き合いてえ……」

■岬さんの“好評!”ポイント
・置いているアイテムから、オシャレさだけでなく生活力を感じる
・オシャレ雑貨と100均アイテムの組み合わせが上手く、安い物がある部屋に見えない
・冷蔵庫がスッキリ片付いていたり、キャラメルマキアートが常備されていたりと、生活スタイルからオシャレ
■岬さんの“気になる……”ポイント
・とはいえ、オシャレすぎて気を遣ってしまう
・「今は彼女いないです」と言われた上での、お風呂場のクレンジングオイルは相当気になる
・こういうオシャレでモテそうな人に恋をしても、傷つくのは自分だなとわかる
おわりに
岬さんにはシナモンの防御網が効かなかったようなので、今回のロケはこの辺りでやむなく終了とした。
個人的に今回勉強になったのは、オシャレがなんたるかわからなくても、自分が好きになれそうな雑貨メーカーを見つけ、そこのアイテムを揃えていけば、それだけでかなりオシャレな部屋を作ることができるということ。
取材後筆者も実際にダルトンに足を運んでみたところ、一度ユウ君の部屋という「正解」を見たからか、「この雑貨はあそこで使えるな」「このアイテムは水回りで映えるな」など、不思議とアイデアが湧いてきた。
みなさんも、どうすれば部屋をオシャレにできるかわからないというときには、一度オシャレな友達の部屋を訪れてみるといいかもしれない。そして、お気に入りのメーカーを見つけたら、思い切って模様替えをしてみてはいかがだろうか。
とりあえず筆者は、安直にダルトンのモデルルームを目指します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
取材・編集/サノトモキ+プレスラボ
写真/藤原慶