健康診断を担当する人事労務が知っておきたい「企業の義務」




健康診断について、「人事労務部に配属されるまで、単なる福利厚生の一つだと思っていた」という方も少なくありません。

健康診断は、従業員の健康と安全を守るため、すべての企業に義務付けられています。今回は、人事労務担当者が知っておくべき「健康診断の基礎知識」を紹介します。

労働安全衛生法で定められている健康診断の「義務」

「なぜ健康診断を、会社で管理する必要があるのだろう」と疑問に感じたことはありませんか? それは、事業者は労働者に対して、身体・生命に対する安全配慮義務を負っているからです。(労働契約法第5条

・業務にあたる労働者の安全や健康に配慮した適正な配置を実施する
・業務が原因でおこる健康障害を早期に発見して被害拡大を防止する

これらの目的を達成するため、「事業者は、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならない」(労働安全衛生法第66条)と規定されているのです。もちろん、費用は「福利厚生費」として経費に認められます。

事業者がこの規定を違反した場合は、50万円以下の罰金を科せられることになります。(労働安全衛生法第120条)ですが、従業員側にも「健康診断受診の義務」があり、従業員に対して健康診断受診を強く要請することが可能です。

健康診断の種類と検査内容

上述した目的を達成するため、健康診断にはいくつかの種類があり、業務内容や対象に応じて項目は異なります。

健康診断の種類

一般の事業所で実施する「一般健康診断」と、特に有害な業務にあたる従業員に対して実施する「特殊健康診断」があります。該当する健康診断について判断が難しい場合は、事業所の最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に相談・確認しましょう。

画像引用:厚生労働所・都道府県労働局・労働基準監督署

定期健康診断で実施する検査項目

健康診断では、それぞれ検査項目が定められています。最も受診者が多い、一般健康診断の定期健康診断で実施する項目をご紹介します。

年齢などの条件によって省略できる項目もあり、社員一人ひとりの状況や、加入する健康保険組合のオプションなどの組み合わせを管理しなければなりません。

・既往歴及び業務歴の調査
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
・胸部エックス線検査及び喀痰(かくたん)検査
・血圧の測定
・貧血検査
・肝機能検査(GOT、GPT及びγ-GTPの検査)
・血中脂質検査(LDL コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
・血糖検査
・尿検査
・心電図検査

出典:厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断の概要

健康診断実施後にやるべきこととは?

健康診断実施後、その結果に応じて労働安全衛生法に基づいた適切な対処をすることが必要です。

【健康診断結果の記録】
事業者は、健康診断の結果を記録しておかなければいけません。(安衛法第66条の3)

【健康診断結果についての医師等からの意見聴取】
健康診断項目に異常の所見のある労働者について、必要な措置を医師または歯科医師の意見を聴取します。(安衛法第66条の4)

【健康診断実施後の措置】
必要があるときは、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を取ります。(安衛法第66条の5 )

【健康診断の結果の労働者への通知】
健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません。(安衛法第66条の6)

【健康診断の結果に基づく保健指導】
健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません(安衛法第66条の7)

【健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告】
定期健康診断の結果は、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。(安衛法第100条)

参考:厚生労働所・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」

健康診断についてQ&A集

最後に、従業員や若手人事スタッフから健康診断について、多く寄せられる質問をピックアップして紹介します。いずれも実務にあたるスタッフは押さえておきたい重要なポイントです.

健康診断は契約社員やアルバイトも健康診断の義務がありますか?

条件を満たせば、健康診断を行う義務があります。条件は以下の通りです。

・期間の定めのない契約(有期雇用ではない)、もしくは契約期間が1年以上見込まれている契約
・労働時間が通常の労働者の労働時間の4分の3以上

なお、派遣社員の場合は派遣元企業に健康診断を実施する義務があります。

健康診断の費用は誰が持つの?

当然、事業者負担で実施されるべきものです。ただし、本人が希望して年齢対象外の診断項目や検査項目以外のオプション検査を受診する場合、自己負担分を求めることは可能です。

健康診断を受診中は業務時間?

一般健康診断の場合、受診中の賃金は、労使間の協議によって定めるべきものとされています。ただし、すべての労働者にスムーズな受診を促すためには、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。

特殊健康診断の場合、受診に必要な時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要と定められています。

従業員が自分で選んだクリニックで受診したい場合は?

より高度な健康診断のために人間ドックなどを受診した場合は、その結果を会社に提出することで、会社が指定したクリニック以外で健康診断を受けることができます。これを「自発的健康診断」と呼びます。

雇い入れ時の健康診断、前職で受けた健康診断結果でもよい?

必要な検査項目を満たしていて、3カ月以内に受診した健康診断結果を書面で提出した場合は、新たに健康診断を受診させる必要はありません。(労働安全衛生規則第43条

まとめ

健康保険組合、従業員、健康診断を実施するクリニック、労働基準監督署など、健康診断を実施する際に人事労務担当者がやりとりする相手は多岐にわたります。

社員数が多く、従業員の年齢も幅広い会社であれば、「1年中、健康診断についての何らかの業務がある」という担当者も少なくありません。それほど社員の健康を守ることは、最終的に企業の生産性向上につながる大切な業務ということなのです。

「健康」と「良い経営」を密接な関係として考える「健康経営」のために、より高い受診率を目指してはいかがでしょうか。






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