【あの人の、ひとり暮らしの思い出#かっぴーさん】 こだわりを研ぎ澄まし、たどりついた“居心地のいい暮らし”




SNS時代が生んだ漫画家「かっぴー」さん(@nora_ito)。元々は社内で描いていたという漫画『SNSポリス』が人気を得て漫画家としてのキャリアをスタートし、現在はジャンプ+で連載中の『左ききのエレン』や『アントレース』の原作も手がけ、「オトナが読んで心を掴まれる少年漫画」として高い評価を受けています。

今回はそんなかっぴーさんが、これまでどんな部屋に住んできたのかという歴史と共に、ここでしか聞けない!? 漫画における“部屋哲学”を聞いてきました。

かっぴー

漫画家。1985年生まれ、神奈川県出身。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店のクリエイティブ職に。2014年に面白法人カヤックへ転職後、社内向けに漫画を描くようになる。このときの作品「フェイスブックポリス」をWEBサイトへ公開し、大きな反響を呼んでネットデビュー。以降、続編「SNSポリス」「おしゃ家ソムリエおしゃ子」をはじめWEBメディアでの連載を担当。また、cakesで「左ききのエレン」を連載し、これを原作としたリメイク版が少年ジャンプ+で連載され、2018年現在単行本4巻まで発売中。また、ジャンプSQ.にて連載中の「アントレース」原作も手がける。

憧れをこじらせて選んだ東京の中心地、新宿

――いきなりですが、以前はお部屋に加藤あいさんのポスターを貼ってたんですか?

かっぴーさん(以下、かっぴー):え、なんでそんなマイナー情報を知ってるんですか…。

――Twitterをさかのぼっていたら発見しまして。

かっぴー:こわっ……! 実家に住んでいた学生時代に貼ってましたよ。

――そのころのお部屋ってどんな感じだったんですか?

かっぴー:超汚いです。ひとり部屋でしたけど、物は多いし本当に狭かった。おかんの片づけが定期的に入って、「やめろよー!」って怒る、みたいな。

――ザ・思春期って感じですね。初めてのひとり暮らしはいつだったんですか?

かっぴー:社会人になって、新宿御苑の近くに住んだのが最初。実家が神奈川なので、東京への憧れが強くて……。なるべく都心に住みたかったんですよ。でも、その“なるべく都心”の発想が、ちょっと弱くて。今だったら三軒茶屋とかを選ぶと思うんですけど、当時は「東京の中心といえば新宿だろ」って新宿御苑を選んでました。

――東京の中心=新宿っていう気持ちはわかる気がします。お部屋自体は、どんな感じだったんですか?

かっぴー:めっちゃ狭かったですね。東京に住む=狭い部屋に住むって思いこんでたっていうのもあったけど、実際そういうところしか借りられなくて。ベッドを置いて机を置いたらもう終わりだったな。

選ぶべきは、“都心への精神的な距離”が近い家

――新卒で1軒目から都心とは、ある意味チャレンジですよね。

かっぴー:2件目に住んだ家も新宿なんですよ。どれだけ新宿が好きなんだよっていう……。おかげで「新宿もういいわ!」って感じですからね。

――同じ新宿で2軒?

かっぴー:最初の家の家賃が高かったから、もう少し安くしたくて。でも、生活はあまり変えたくなかったから、同じ新宿区ということで東新宿に移りました。歌舞伎町にも近いエリアなので、同じ建物にはホストっぽい方も住んでました。

――エレベーターの中でばったり、とか?

かっぴー:あります、あります。でもちょうど生活リズムが逆で、僕が朝出勤するときに帰ってきて、僕が家にいない時間に彼らは家にいてっていう感じだから楽でしたね。うるさくしても周りからクレームの心配がなくて快適だった。

――騒ぎ放題じゃないですか!

かっぴー:でも、いかんせんここも狭くて……。宅飲みもしたけど、友達に「狭いな」って笑われながらでしたよ。

――新宿だと集まりやすそうですが。

かっぴー:ところが、新宿駅からは遠いので、そうでもないんですよ。その頃に感じていたのは「新宿は遊びにくるところであって、住むところじゃない」ということだった。電車に乗ったら新宿のど真ん中に行けるのに、新宿のそばに住んでいると歩いていかなければならない。それだと結果的にアクセスが悪いと思うようになりました。実家にいたときの方が、気持ち的には新宿に行きやすかったことに気づいて……。精神的な距離が離れちゃったんですよね。最近はさらに考え方が発展してきて、アクセスが悪い神奈川や千葉に住むんだったら、空港が近い福岡に住むほうが都心に出やすいんじゃないかな? って思うくらい。近い・遠いっていう単純な距離じゃなくて、アクセスを頭にいれて考えると、選ぶ場所が変わってきますよね。

部屋をおしゃれにするならハード面から!

――その知見を持って、次に住んだのはどちらでしたか?

かっぴー:川崎です。新卒で入った広告代理店から面白法人カヤックに転職したタイミングで引越しました。

――東新宿で培った経験をもとに選んだお部屋ということですね。

かっぴー:そうですね。今までは住所を気にしすぎた結果、家自体はすごくダサかったんですよ。建物がオシャレだったら頑張って部屋をきれいにするかもしれないって考えたんです。ひとり暮らしを始めたころは「ちょっとしたマンションでもオシャレにしてやるぜ!」って思ってたけど、あれはちょっと厳しい(笑)。モチベーションが途中で切れちゃうんですよ。

――かっぴーさんはファッションもおしゃれだし、どの時代でもおしゃれな部屋に住んでるイメージでした。

かっぴー:こだわってたからこそ、ダサかったですね。『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』(ROOMIEで連載していた漫画)でネタにされてる男子のモデルは、ほとんどが僕なんですよ。すごくこだわってるけど、すごくスベってるっていうのがそれまでの家でした。

△おしゃれ部屋への情熱は強かったけど、「維持するのが難しいし、狭くて限界があった」と過去の部屋の思い出を振り返る。

――ひとり暮らし生活を通して、印象に残ってるできごとや思い出ってありますか?

かっぴー:「なんだかドラマっぽいな」って思ったのは、最初に住んだ新宿御苑の部屋に引越してきた当日、何もない部屋に掛け布団だけで寝た夜。ひとり暮らしには大学生の頃からずっと憧れてたんですけど、家にも余裕はなかったし、美大生だからバイトもままならなくて、ひとり暮らしって現実的じゃなかったんですよね。それで、就職して念願のひとり暮らしになって。カーテンもベッドもなくて、床で寝た初日の夜。それでも「やったあ!」って最高の気分でした。あれは、今でも忘れられないな。

居心地のよさ重視のふたり暮らし

――そして、この春からふたり暮らしになったわけですね。

かっぴー:そうですね。妻(当時は彼女)と、一緒に住もうってことになって。

――ひとり暮らしからふたり暮らしになるときに、意識したことってありましたか?

かっぴー:絶対にひとりになれる部屋を作ること! いくらリビングが広くても自分の部屋を確保したかった。だからそこは譲らず「ひとり部屋がほしい!」って主張しました。あやうくウォークインクローゼットに押し込まれそうになりましたけどね(笑)。

――ウォークインクローゼットはつらい…。私物はどうされましたか?

かっぴー:ふたりで住むために、服なんかは処分しました。でも、新宿時代より前から集めているスニーカーコレクションは専用の部屋を作りました。陳列棚にかっこよく並べれば、それをキープしたいから散らかさずに済むんですよ。

――今のお部屋はどんなコンセプトですか?

かっぴー:決めすぎちゃうと「これは部屋に合わないから置かない」とか考えちゃうから、あんまり考えていません。趣味が違うふたりが住むとなると、あんまり几帳面にやりすぎると窮屈になるなって。居心地のよさ重視だから、特別おしゃれにしようとも思ってないですね。ふたりともゴロゴロしながらNetflixを観るのが好きなので、でっかいソファを買ったんですよ。鮮やかなオレンジ色なんですけど、見るたびに元気が出るから「これはいい買い物したな」って思ってます。

――ライフスタイルの変化とともに、着々と部屋も進化している……!

かっぴー:新宿時代は帰ってきてもかえって疲れてましたし、コンセプト重視でおしゃれすぎる部屋も疲れるから。いまが1番楽だし、住んでて気持ちいいですね。

満を持した時しか描かない部屋のシーン

――作品にもお部屋のカットって出てきますけど、そちらにもかっぴーさんの部屋へのこだわりってやっぱり反映されてるんですか?

かっぴー:部屋へのこだわりというか、家のシーンは“ここぞ”という時にしか描かないようにしています。家ってプライベートの象徴だから。特に『左ききのエレン』では必要以上にプライベートを描かないようにしてるので、描くときは“満を持して”キャラクターを描ききりたいとき。だから描いたシーンは、よく覚えてますよ。主人公の光一が住んでいるひとり暮らしの部屋を描いたのは1回だけなんですけど、「オレ今日デザイナーになったんだよな…別に昨日と同じだな…」っていうシーンがあって、あそこは絶対に家じゃなきゃダメだと思ってて。環境は変わったのに自分は進歩していないことに気づいた、絶望を描いたシーンですね。

『左ききのエレン』原作版第37話。新卒でクリエイティブ本部に配属されたが、そこにあった現実に打ちのめされる光一が部屋でつぶやくシーン。

――光一が目黒広告社に入社して配属された日ですね。

かっぴー:そうそう。脱いだ洋服がカリモクのソファーにベロンってなってるだけで、だいたいどんな人物かわかっちゃうじゃないですか。そういうやつが光一なんだって。家って住んでいる人のことを伝える情報量が多いから、描くといろいろバレちゃうんですよ。だから流川が家にいるシーンを描いたときも、満を持してって感じでしたよ。ずっとスーツ姿で社内での様子しか描いていなかった流川が初めて家にいて、部屋着で、牛乳を飲みながら、彼女に「俊くん」と呼ばれてる。実は流川が可愛いやつだってことも、最初の段階では見せられないですから。現実世界でも会社の真面目な先輩が、いきなり「うちの奥さん可愛くて」なんて惚気てくることないでしょ。だから読者にも前半は我慢して欲しかった。「おまえら、まだそんなに流川と仲良くないから!」って。

――それがリアリティを越えたリアルさに繋がってるのか……。

かっぴー:普通の漫画だとストーリーが進むにつれて、ひとりずつキャラを掘り下げる時期がありがち。でも、普通は仕事仲間の事情なんて一切知らないことが多いですよね。知ったとしても喫煙所とかでポロッと話してしまって、意図せず知ってしまうみたいな。だからマンガも、そういう前提で描いています。

「ひとり暮らし時代の部屋のつくり方は、やっぱり光一と一番似ているかも」と語るかっぴーさん。漫画づくりにおいても、部屋や家に対するこだわりとキャラクターへの強い思い入れが垣間見えました。

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取材・編集/坂井彩花+プレスラボ
写真/二條七海(チューリップ組)






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